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生命保険ホントの話3「夏のボーナス」

2022.07.06

今年は瞬く間に梅雨が終わってしまい、巷は既に真夏の様相を呈している。
年間或いは一定期間の降水量は減るとの予報は無いようで、ゲリラ豪雨の多発や台風による豪雨などが心配される。
と思っていたら、早くも台風4号がやってきた。

そんな中「夏のボーナス」に関する報道が、出だした。
残念ながらコロナの影響もあり企業の業績も低迷している中、あまり景気の良い話は聞こえてこないのが実情のようである。
ウクライナ情勢の影響もあり物価上昇が叫ばれる中、酷暑同様財布に厳しい状況のようだ。
ところで、生命保険を取り扱う代理店(保険募集人)にも、実は「ボーナス」なる制度が存在する。
実はこの制度が結構曲者で、様々な方面に波及する事になったのである。

通常損害保険の募集に際し「ボーナス」の制度は無く、取り扱った保険料に一定決まった手数料率をかけて、基本手数料が算出される。それに様々な条件で1年単位で変更される調整率が加味され、決まった手数料が支払われるといった運用がなされている。
これに対し生命保険の場合、払込期間や掛け捨て保険料部分の大きさなどで手数料が決定され支払われる。
更にこれに加えて保険会社が定めた一定期間において、決められた保険商品を目標以上に販売できた場合、通常の手数料に加えて上乗せ手数料(所謂「ボーナス」)が加算される制度がある。
この一定期間や保険商品は、各保険会社が各々個別に設定が出来るようになっている。
ケースによっては、代理店側と折衝して設定するケースもあるようだ。(少なくとも過去はそうであった。)
さてこの制度、認可を受けている為違法なものではない。それでは一体何に影響していくのであろうか?

別記事にも書いたが、例えば大型商業施設の一角に「保険ショップ」なるブースを構えた販売店を見る事がある。
その多くは数十社の保険会社の商品を取り扱い、お客様に最適な提案を行う事をうたっている事が多い。
そのような業態の店舗において、新たな保険商品が発売されたわけでもないのに主たる販売商品が時期ごとに変わってしまうおかしな現象が見られた事がある。
例えば京阪神地区の大手商業施設毎にブースを出店している生命保険代理店において、その全てのブースが4~5月はA社の医療保険、6~8月はB社の医療保険、9~11月はC社の医療保険を主力販売するような事である。
商業施設の設置地域の住民特性は結構差があるにも関わらずである。
なぜこのような不可思議な事が起こるのであろうか?

実はその原因は「ボーナス制度」あると言われている。
同じ医療保険を取り扱うのであれば、販売店側の心理としては収益率の高い商品を優先的に販売したくなるものだ。
そのため、ボーナスが支払われる期間にある保険会社の商品を、優先的に取り扱う事になってしまうのである。
比較的理解しやすい医療保険においても保険会社毎には、結構保障の中身や自己負担額などに差がある。
このあたりを詳細・正確に説明され、その上で最終商品選択をユーザーが行うケースは、実はあまり無いようだ。

結果として取扱商品・保険会社に偏りが発生し、そこに「お客様への最適な提案」が担保されているかどうかは、かなり不透明感が出てしまう事になるわけだ。
従ってほぼほぼニーズや経済環境が同じような2世帯のお客様に対し、6月30日に加入されたお客様にはA社の商品をお勧めし、7月1日に加入されたお客様にはB社の商品をお進めするといった事が行われるのだ。
この制度はユーザーのメリットに関わらないところで横行していたため、約5年前から自粛の報告で少なくなってはきているようだ。
しかしながら外資系を含め、まだまだ闇の中の部分は多い。

個人的な見解だが、こと生命保険において一番安心できる情報提供と商品設計は、損害保険会社が直接経営している保険代理店のように思える。

無論系列会社の商品を優先的に提案・販売したいのは山々にあるのだが、募集人が全て損害保険会社の社員である為コンプライアンスには極めて厳しく対応せざるを得ない。
従ってユーザーの希望をきちんと確認し、その上で適切な提案を行う事が義務化されているからである。

先日家の近所で飲んでいたところ、元気のよいおっさんが大声でしゃべっていた。
どうやらおっさんは歯科医師のようで、こんなことを言っていた。
「プーチンがいらん事するから、色んな物価が上がってきてるやろ。実はな、虫歯の治療に使う金銀歯の原料のパラジウムっちゅーんがな、ロシアが半分弱位輸出してきてるねん。もうすぐ値上がり必死やから、虫歯あったら早めに治療に行っときや。」(ほぼ発言ママ)

翌日筆者は、夫婦でそっと近所の歯医者に行って点検してきた事は言うまでもない。

執筆:Y.O

 

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