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名店?迷店?目が点!

2021.10.26

 筆者は結構ウロウロする事が好きで、特に横丁の様な狭い所にある店に興味を誘われる。飲食店はもちろんの事雑貨店・古本屋などの店舗だけでなく、趣のある佇まいの個人宅なども見ていて楽しい。勝手に入り込んだら犯罪だし覗きこんでいても不審者扱いなので、そこは節度をもっているつもりだ。
 表通りで流行っているお店はそこはそれで良いのだが、路地や裏道で長く営んでいるお店などはやはり理由があって続けられるのだろうと思う。そこに興味が湧くのである。

 昔奈良県橿原市に勤務していた頃、隣町に大和高田市という所があった。そこはお寺と商工業の町として栄えてきたのだが製造業が大阪や近隣地に転出していき、大手スーパーの進出により歴史ある商店街もさびれていった。
 その商店街にたまたま仕事で通りかかった際、駄菓子屋とおもちゃ屋の中間みたいなお店が店じまいセールをしていた。ピンときて物色していると、(仕事をさぼっていたわけだが)ブリキでゼンマイ仕掛けの車のオモチャが400円だのランチアストラトス(知っている人は知っている名車)の古いラジコンが700円だの発売当時の値段で売られていた。
 店主夫婦は高齢となり、廃業して子供夫婦の近所に移るとの事。さびしさを感じながら、おもちゃを大人買いして帰った記憶がある。長らく近所の子供たちの名店であったろうお店の幕引きだった。

 また先日お取引先まで歩いてお邪魔した帰り、「わらび餅専門店」なる看板を見つけ入ってみた。
 筆者はお酒は好きなほうだが甘いものが苦手で、この手の店に興味は殆ど示さない。にもかかわらず入ってみたのは「わらび餅専門店で、生活していけるのか?」の1点につきる。お邪魔したのは残暑厳しい折だったのでニーズは想像できたが、冬場にわらび餅頼むなどは考えにくかった。
 
 入ってみるとテイクアウト専門店なのに「全席禁煙」の表示。「なかなかやるやんか。見つけた。」と内心ほくそえみながら店の奥に声をかける。店主は想像していたより若く人柄も良い方で、少々拍子抜けした。
 エアコンも入れずに扇風機3台が狂ったように回っていたので聞くと「受注生産の手作りなので、エアコンの温度で味が変わるのを防ぐため」との事。第一印象とは違う意味で「なかなかやるやんか」と感心し、出来上がりを待っていた。ほどなくして物が出来上がり、スタッフへの差し入れ分と家内の分を入手。

 お代を払い気になっていた「幻の黒本蕨もち」なる張り紙について尋ねると、お代は3800円賞味期限が6時間との事。売れるかと聞けば予約販売で、新幹線で買いに来る常連もいるとのお返事。これなら冬場でも稼げるはずである。マニアの存在と少し上等な焼酎一升分のお値段を聞いて、目が点になった。


 お土産に持ち帰ったわらび餅が大好評だったのは、言うまでもない。

執筆:Y.O

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