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謝意と方言

2021.12.07

筆者が前職で初めて福岡・博多にて「ラインマネジメント」を執り行う職制に就いたとき、時の研修セクションから「部下からの手紙」なるものをもらった事がある。この手紙は5項目の質問に対して実際の部下からの評価が、直截的に記載されたものだった。
 当時仲間と楽しく且つ破竹の勢いで業績を挙げていた時期だった為、自信を持って封を開けた記憶がある。

 総じて好意的なコメントが多かったが、「最近1か月の間に、ありがとうと言われた事がありましたか?」の問いに10人中3人のみがイエス、4人が3か月以内ならある、3人が面と向かって言われたことはないとの回答であった。
 結構これにはショックで、自分ではできていた(或いは言葉は無くともわかってもらえていた)と思い込んでいたが、実はそうではなかったようなのである。

 得てして人間は自分の物差しで勝手に周囲を推し量り、それが間違いないと勘違いして物事を判断したり進めたりしがちのようだ。この点をよくわかった上で折衝や商談等々を行っていかないと、人間関係を含め大きく躓いてしまう事が往々にしてある。
 自己主張が強く周囲から残念な評価の人の多くは決定的にこの部分が欠けているとの分析が出ており、他人のふり見て我がふり直せではないが注意が必要な点であろう。

 この件以降、筆者は少なくとも周囲にはできるだけ「ありがとう」を欠かさず、相談などに来た場合は意識して立ち上がり相手を立たせたまま話すといった事は避けるようにしている。
 周囲やスタッフに媚び諂うことなく対等のビジネスの仲間として敬意を払う事で、より良いアイデアや提案、正確な報告が頂ける事を期待するからである。

 先日出張の際このアンケートを出してくれたスタッフと、久しぶりにお話しする機会があった。
 その中で上記の様な結果となり、周囲に負荷をかけていた事の謝罪をした。
 ここでまた新事実が判明したのだ。実は過去3か月以内の4人と言われた事が無いとする3人の内少なくとも出張時面会した3名は、当時関西弁が不案内であった為、筆者がよく使っていた「おーきに、すんません」という言い回しを「ありがとう」ではなく「おふざけギャグ」だと思っていたようなのである……。

 約25年の時を超え、方言も含めたコミュニケーションの取り方の難しさを改めて思い知った出張となった。

執筆:Y.O

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